●ミルシート「鋼材検査証明書」(Inspection Certificate)

ミルシートとは、鋼材の材質を証明する添付書類のことで、鉄鋼メーカーが鋼材製品を納入時に発注者へ発行する成分証明書のことをミルシートと呼ぶのが一般的である。
内容は鋼材の機械的性質や化学成分などで、規格値と製造実績値が記載される。
商社名・注文者名・紹介番号・証明書番号・工事番号・契約番号などの一般事項のほか、製造実績値を表形式で寸法(板厚などを含む)・員数・質量・化学成分・引張試験値などが規格値と対比して記載される。

 化学成分欄 :一般に、5 元素(C,Si,Mn,P,S)の割合が記載される。材質によりCu,Ni,Cr,Mo,V,Nb などの欄も記載される。
 引張試験欄 :降伏点または耐力(N/mm2),引張り強さ(N/mm2),伸び(%)など。

日本では、工場や製作所(mill)が発行する書(sheet)という意味から、ミルシート(millsheet)と呼ばれる和製英語である。「鋼材検査証明書」(Inspection Certificate)という名称で発行されることも多い。
アメリカでmilsheet とは、Military Specifications and standards に基づいて作成したcertificate のことを言い、Mil Certificate ともいう。

●MSDS「化学物質等安全データシート」(Material Safety Data Sheet)

MSDS とは、化学物質の有害性についてのデータシートで、その物質の性状・含有元素・取り扱い・危険性などの情報を記載したものである。
鉄鋼メーカーで規格が指定された鋼材を受注した場合に、その製造結果が指定された規格などの要求事項を満足していることを証明した書類のことで、 正式には 「鋼材検査証明書(Inspection Certifcate)」、又は単に「検査証明書」と言い、慣例としてその製品を製造したメーカーの製造箇所の品質管理部門が発行する。
内容は、商社名/需要家名・契約番号・商品名・証明書番号などの一般事項のほか、寸法・員数・質量・検査番号・めっき量(表面処理品の場合)・引張試験値(引張り強さ、降伏点、伸びなど)・化学成分(5元素・・・C,Si,Mn,P,S)などの製造実績値が記載されている。

●ICP データ

ICP(inductively-coupled plasma)とは分析法の一種で、一般的であるICP-AES は誘導結合プラズマ発光分析装置のことである。元素の含有量などを測定できる。
ICP データは発光分析法による元素分析の結果である。

●3 つの違いを簡単に言うと・・・


例えば、メタノールのMSDS には「引火性」とか「蒸気を吸い込むと頭痛やめまいがある」「吸い込んだときの応急手当の仕方」などが書いてあります。これは、メタノールそのものの安全情報です。
これに対し、ICP データやミルシートには、○○社製のロット番号××番のメタノールについて、「鉛が△△ppm 含まれ、ヒ素が□□ppm 含まれている」というように、その製品に含まれる微量金属元素について書いてあります。
つまり、MSDS で主成分の安全情報がわかり、ICP やミルシートで微量の金属成分が分かるわけです。
「メタノール」と注文しても、会社によって作り方や生成法や合成装置は様々ですので、製品によって不純物も異なってきます。医療用に使うときには有毒金属が含まれていてはいけませんし、半導体プロセスに使う試薬にはごく微量でも金属が入っていると半導体製品の品質の低下を招きます。だから、ICP データでその製品の品質を知る必要があるわけです。
MSDS が化学的安全情報、ICP は工業的品質情報と言えるでしょう。
各自動車メーカーからIMDS 報告により求められるのは、「納入している全ての成分の報告」という点から、ミルシートまたはICP などの成分分析データをサプライチェーンより取得する必要があるということになります。
しかし、成分分析には膨大なコストと時間がかかるため、基本的には材料メーカーより収集した情報に基づいて報告するという方法を取っています。

*ICP データやミルシートは、必要情報が記載されていれば特に決まった書式はないようです。